みんなにも、「この人いいひとっ!」て分かる瞬間って、あるよね?(馴れ馴れしい入りですが)
まあ分かり易く言えば、スーパーの行列の後ろに乳飲み子を抱えて並んでいるお母さんに「先、どうぞ」と順番を譲るサラリーマンとか、混雑する電車の中で杖をついた老人に「席、どうぞ」と席を譲るサラリーマンとか、高速のサービスエリアのトイレで大のほうに足踏みしながら並ぶ少年に、「おじちゃんもう手遅れだから、どうぞ」と順番を譲るサラリーマンとか(もらしたんかい)、とにかく人に接するときの行動が周りの人に「いいひと」って思わせる事が多いでしょうな。
ただし。
そんないわゆる「行動発信としてのいいひと」とはちょっと違う、加齢臭のごとく無意識に匂い立つ(たとえが最悪)、言うなれば「いいひと臭」みたいなんで確信することが、この人生で何度かありまさーね。
ボクは変わったデザインのTシャツが好きなんだけど、ここ最近のマイブーム(この言葉ももう普通のコトバとして認知されてるな。みうらじゅん先生エライッ)が4枚ほどございまして。その3枚のTシャツのイラストを書いた人がおりまして。
名前は、豊永盛人さん。琉球張り子の作家がお仕事ですが、自らのイラストをプリントしたTシャツや琉球かるたなんぞを作ってます。
まずそのTシャツのデザインがそれぞれ「のほのんとやる気なくこん棒を持って棒立ちの赤鬼」「引っ越しの荷運びに疲れたかのように猫背でだるーんとしたマレー熊」「なあんにも悩みがなさそうな3頭身の犬」。
この作品群を聞いただけでいい人そうでしょ?
で、このイラストというのが元々は「琉球かるた」に書かれたものの抜粋なんです。そのかるたも購入(一つは人にあげたので、これまでに2セット購入。第2弾の「沖縄おもしろかるた」を含めると3セット)したんですが、箱を開けると、毛筆で書かれたかるたの説明書。
そこまではいいんです。
その説明書、読み進めていくと、最後に注意書きが。
「◯(あるかるたの頭文字)の文章には、「ん」が抜けていますので、買った人が自分で書き込んでください」
なんかもう、ゆるーくていい人そうでしょ?
それがあまりにもよろしくて、夏前に首里にある工房にアポなしでお邪魔してみました。
首里の細い道路に面したその工房、古びたガラス戸の木枠はまっ黄色に彩られてます。
ガラス戸を叩き、こんにちは、と声をかけても応答がありません。ので、そのガラス戸を開けようとすると、奥から丸坊主に眼鏡の温和そうな男の人が、「しぃー」と口元に人差し指を立てています。
それが豊永さん。
静かに戸を開け、恐る恐る入ると、豊永さんは工房のカウンターに立ったまま恐縮しながら「すいません、赤ちゃんが寝てるんで」と頭をへこへことさげています。
「いえいえ」と言いながら何とはなしに赤ちゃんの姿を探すと、豊永さんの立つ足下のじゅうたんに、ころころ太った赤ちゃんがごろぉんと転がされてました。
とりあえず「豊永さんのTシャツが好きで勝手にお邪魔してきたんです」と事情を説明すると、豊永さんは手に持ったはさみを動かして「ゆっくりしてってください」とやさしい一言。
「じゃあゆっくりしてきます」と答え、ちょきちょきとはさみを鳴らすの豊永さんに、「何作ってるんですか?」と聞くと、豊永さんは「ペンギン、切ってます」
言いながら豊永さんはテーブルいっぱいに広がる白い用紙に無数に飛んでいるペンギン達を、ひとつひとつ楽しそうに切り取りつづけていきました。
その瞬間、豊永さんの耳の後ろから立ち上ってましたよ。ぷわわわぁーんと、「いいひと臭」が。はい。
ま、だからどうなんだ、って聞かれたらこまりますけどぉ、思い出したんでぇ、仕事の筆休めで書きました。
ぼんさんがへをこいたっ。

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